自立経営維持の危機への、基本的対策方法とその根拠関連情報 (1)〜(7)
  
1. 危機が、経営目標の未達成連続によるものである場合の、基本的対策と具体策について
〔基本的対策方法〕
 *最悪の場合でも再起不可能にはならないように、ということを念頭において、過去と現在の業績結果の検討をして、未達成連続の原因を見いだし、 それを減少ないし逆転させうる対応策を考えてその後の経営計画(すなわち経営の目標と方法) に組み込み、 それを実践しながら、継続的に実績を見てその経営計画を必要に応じて修正し、さらにその経営計画を実践して、その経営目標達成のための努力・実行を積み上げていくこと、が基本的対策です。

 ** 要するに基本的な経営業務の方法の実行−ただし資金収支を重視したより厳格な実行−に尽きるものです。

〔具体策について〕
1.短期資金収支計画書の作成とそれに基づく資金収支管理をしていく。
 経営目標未達成が3カ月以上も連続するような場合は、期日支払資金にも支障がでることがあるため、年単位や月単位の資金収支計画書だけでなく、1か月間の旬日ないし1日単位の必要な資金収支計画書を作成して資金収支管理をしていき、そのうえで経営業績結果の動向を見ていく。
 具体的に、短期資金収支計画書の作成は、
日付と収支の表へ、「収益」資金収入の見通しから記入していき、2.以下の方法を参考にして、順次可能な次善の対策方法を検討し選択して行う。
 これによっても、特に取引上でも厳格な取扱いがされている手形決済資金、その他支払期日の定まっている預り金、借入金等の支払予定資金確保の見通しがつかない場合は、信用喪失を少しでもより少なくしていく観点から、その実行後の支払の見通しが立てられる限りでの、順次可能な次善の「借り換え」、または「繰延べ」の依頼を、2.以下(特に3.の(オ)以下)の、検討をし、選択して行っていく。
 ことになる。


2.自社主力商品の部門別、得意先別、商品別、地域別の最近数カ月から3年間位の「売上元帳」や「損益計算書」上の業績を、より徹底的に検討して、経営業績未達成連続の具体的な「原因」を把握するよう努める。
 *原因となる(そして、それに対して働きかけて効果が得られることが見込める)共通なもの−の、その共通的な法則性−については、このホームページの中の、「自立する職業人の必須経営認識」の記載などを、参照してみてください。


3.その具体的な「原因」に対応する、その原因を減少させ、さらには、逆転させることができるような具体的な方法を考えて設定してみる。
 *その共通な原因に応じた、共通に有効な方法のいくつかについて、ここでも摘示してみます。

ア).まず,ほとんどすべての場合になされるべきこととして,主力商品の売上数量を増やすことが可能になる方法がないかを考えてみることになるが、1か月・3か月・6か月・1年・3年の各単位期間で売れてきた主力商品の売上事例状況からみて、主力商品の売上数量を増やすことが可能になる方法がないかという観点から、何らかの法則性が見いだせないか、検討してみる。

 そのうえで、主力商品販売・主力商品改善・主力新商品開発転換などの方法の検討を行い、売上販売(契約獲得)促進計画を、費用と照らしてできるだけ大きな効果をもたらすような方法を考えてみて設定し、経営計画に組み込んで実行していってみる。そしてさらにそれを実践結果に照らして点検修正改善し、さらに実行していってみる。
 下記のイ).の目標を逆転させるような結果になっても,その結果として売上高収入を増やせることになるような,主力商品の単価の引下げも,検討されるべきものである。
 かつ、これは、自社決算書情報・業界決算書状況を示す統計情報(公的なもの・業界の組織団体のもの)・「産業連関表」などの情報を照合して、自社主力商品市場での「有効需要」の(期間単位リピート数量×売上単価−利益−で見積計算する)需要総量の見積・予測などの現実的な状況情報を参照してなされるべきものである。

イ).次に,ア).の目標を抑えたり逆転させる結果になることによって結果的に売上高収入を減らしてしまう、ということのない限度を検討しつつ、主力商品の単価を引き上げることが可能になる方法がないかを考えてみることになるが、これは、最低限度3年間程度の期間の売上高収入と主力商品単価との実際の関係を検討して行うことが必要と考えられる。
 この結果も、ア).と同様にその計画を立案設定し、経営計画に組み込んで実行し、結果に照らして点検修正改善して、さらに実行していく。

ウ).さらに、これもほとんどすべての場合になされることとして、仕入販売費用を減らすことが可能になる方法がないかを考えてみることになる。
 これについては、仕入販売費用の中でア).の目標を抑えたり逆転させることによって結果的に売上高収入をへらしてしまうということのない限度を、やはり3年間以上の期間の売上高収入と仕入販売費用との実際の関係を検討しつつ、多くの場合には、(現状の売上高収入を支えている経営資源のまとまりの保持に影響の少ない費用である)より「流動的」な費用の方から削れるものを削っていって、順次より「固定的」な費用で削れるものを削っていく、という方法を取るべきである。
 この結果もア).と同様にその計画を立案設定し、経営計画に組み込んで実行し、結果に照らして点検修正改善して、さらに実行していく。

エ).さらに、売上が資金収入になる時期が遅すぎたり、仕入販売費用の資金支出が早すぎたりしている場合には、それぞれを逆転させることが可能になる方法がないかを、その結果として売上高収入をへらしてしまうということのない限度を、やはり3年間以上の期間の売上高収入のことを考えてみて、あればそれも計画に組み込んで実行していってみることになる。

  オ).さらに、(家計外での)経営業績目標を家計支出との関係で下げることができる場合(つまり家計の支出を本当に必要な限度にまで削ることが可能である場合)に、その時点での生活の経済的基盤のまとまりの保持にとって影響のより少ない、より「流動的」な部分の支出から削っていって、順次より「固定的」な部分の支出を削っていく、という方法によって、家計の支出を本当に必要な限度にまで削ることによって、経営業績目標自体をより適切なものに落とせないか、検討してみることになる。

 この結果も、ア).と同様にその計画を立案設定し、経営計画に組み込んで実行し、結果に照らして点検修正改善して、さらに実行していく。

カ).以上の検討結果の計画に基づいて、1.資金収支計画表を点検修正しなおして、それに基づいて資金収支管理をしていく。

キ).少なくとも資金収支計画表を設定できるまでは、高利金融に手をださないようにする。
  *ただし、資金収支計画表が設定できれば、高利金融からの資金に簡単に手をだすことはできない−つまりすぐにより大きな信用喪失になる結果になる−ことがわかる。元々の資金繰り悪化への対応が遅れてしまうことに加えて、その高利金融の結果としての資金繰りの、より悪化への対応がさらに必要になってしまうので、結局、より早く大きな信用喪失になる結果になり、かえって倒産への早道になってしまう。
 さらに、暴力団関係者からの「民事介入暴力」も、ここから発生することが多いという法則性も見られる。その結果倒産前でも、後でも、再建や再起をすることが不可能になってしまうことも多くなってしまう。

ク).(以上によっても)経営業績目標未達成の状況が、なお継続するのであれば、次のような方法を順次選択していくこと。

 なお、以下での「事業」とは、勤労者の勤務を含み、また以下での「事業用資産」とは、法的にみて家計からその事業に信用(担保)や資産として投入された資産の、すべてを含む意味で使います。

a.上記のア).〜キ).の方法の実践と合わせての、家計からのその「流動的」な部分の資産から、順次「固定的」な部分の資産までの可能な限りのものを、事業部分への投入を行った結果としての業績をみていく。

b.それでもなお、経営業績目標の未達成の状況が継続するのであれば、一部債権者からの強制執行手続などの法的手続の実行がなされても、何よりその時点以降での債権者の全体に対して失われる−そして多くの場合 最終的に倒産さらには破産という状態にまで行き着いてなおその喪失が増大していく−信用(事業を経営していくために必要な負債負担能力)を、それ以後全体としてできる限り抑えていくために可能になる方法を、この段階では、公正さを主な基準とする法的観点を中軸にして取っていく。
 但し,やはり上記ア).〜キ).の実行は並行させて。
これが、その時点で、将来的にできるだけ早く立ち直る−すなわち再建または再起する−ために必要な選択になります。
*選択できる可能性の考えられる、法的観点を中軸にした対策としては、
−弁護士や司法書士などの指導を受けての−、
@).「任意整理」と呼ばれる、事業の再建または(倒産ではない)清算をするための、債権者間との話し合いでの合意にもとづく、基本的に債務支払の繰り延べと一部免除を含む再建または清算のための手続を取る。
 ここでの「再建」とは、債権者たちとの話し合いでの合意が可能な範囲で、現在の負債総額のうち、合意された範囲の返済完了をするまでは以後の新たな信用は得られないという状態の中で、その返済を完了することをめざして経営を継続していく、ということです。
 またここでの「清算」とは、債権者間との話し合いによる合意の可能な範囲で事業資産の一切の売却処分をして負債を返済したうえで、事業を廃止するということです。

A). 次に,この「任意整理」による再建または清算が、債権者たちの合意が得られないために困難な場合は、以下のような法的手続を選択して、取ることにする。
「再生」手続と呼ばれる、裁判所に申し立てて行う手続で、基本的にすべての債権者に対する債務を、法律上の一定の基準に基づいて、繰り延べや一部免除を受けてその結果の債務を返済しきることによって、事業の再建を行えるようにするための法的手続を取る。 (大規模な株式会社では、「再生」に類似の、再建のためにより強力な法律上の効力が働く「会社更生」手続という法的手続が取られることもあります。)
又は、
「(商法上の)整理」あるいは「特別清算」と呼ばれる,裁判所に申し立てて裁判所の管理のもとで行う、解散前の株式会社や解散後の株式会社の、事業の清算のために行う法的手続を取る。
さらに、それらの手続による再建または清算を目標にした、それらの手続上・法律上の一定基準での支払繰り延べや免除を受けた後の債務さえも返済完了しきれる予測が立てられる見込みがない場合には、
 最後に「破産」と呼ばれる、基本的に裁判所が管財人を選任して、管財人がその時点現在のその事業用資産をその資産の限りで債権者間に法的に公正にその分配を行い、最終的に返済しきれない負債については、以後の強制執行などの法的手続を打切りにして終了させるための法的手続を取る。
 なお,この破産手続がとられた場合でも、それまでの経営に関して、財産隠しや、著しい浪費などのない限り、「免責」という、破産手続完了後に残る負債を法的に消滅させることも、可能になりえます。

 * 事業者ではない、勤労者の「自己破産」も、ここ十数年間増加してきています。この、「自己破産」は、上記に延べてきたような、債務者自らがその手続開始を裁判所に申したてて行われる破産の手続です。
 債権者から破産の申立がなされる場合もあります。
 また、勤労者や、小規模事業者などの場合、破産手続の中で債権者間に分配を行うべき資産が、手続費用にも満たない場合も少なくなく、この場合には、破産の「同時廃止」といって、管財人の選任や資産の分配手続も行われずに、破産手続が進行・完了することになります。

  
2. 危機が、経営業績目標の未達成連続「以外」によるものである場合の基本的対策方法と具体策について

 "危機が、経営業績目標の未達成連続「以外」のものによる場合"とは、

a.自己の経営能力を含む、仕事の能力の喪失を発生させるような事故や病気や、身体的ないし精神的障害の発生による場合

b.「白地手形の振出や裏書」「多額の保証債務の負担」「多額の損害金約定のある契約書への調印」「多額の不法行為責任や製造物責任を発生させるような行為や製品管理」などの、それが一回あるいは数回発生するだけで経営主体の経営を継続していくために必要な経営資源のまとまりを崩してしまうような、法律的に重大な失敗による場合

c.取引関係者の信頼を失ってその結果経営主体の経営を継続していくために必要な経営資源のまとまりを崩してしまうような、犯罪行為その他の、公正さを大きく欠く不法なあるいは違法な行為を行った場合
などです。

〔基本的対策方法及び具体策について〕
 *この場合にも、その原因を正しく見いだし、経営維持の可能性を探して、できるかぎりは、最悪の結果でも再起不可能にはならないようにということを念頭において、その原因を減少ないし逆転させうる対応策を考えてその後の経営計画 (目標と方法) に組み込み、それを実践しながら、絶えず実績を見ていってその計画を必要に応じて修正し、さらにその計画を実践してその業績目標達成のための実行努力を積み上げていくこと、が基本的対策方法。
 ただし、その原因に応じて、具体的には、再生・破産などの法的手続は多くの場合必要で、さらに、家族・友人の援助や、社会福祉制度や社会保障の活用などが必要になることが考えられます。
  
3. 「倒産」と「再生」と「破産」と、「解散」と「清算」の、それぞれの意味

*ここでは、主に事業者の場合のことを述べます。

「倒産」とは、
「経営業績目標が未達成の状態が連続したり、重大な法律上の間違いや、事故などが発生したために、経営主体が自分の意志や行動にもとづかないで−言い換えると、その経営主体の仕事(事業)の関係者からの多かれ少なかれ強制的な行為の選択の結果−、その経営する仕事(事業)を継続できなくなってしまう状態」のこと、あるいは、そのような状態になってしまうこと、です。

「破産」とは、
「経営組織(個人の場合も含む)の倒産またはその危機状態の中で、関係債権者や経営組織自身が裁判所にその手続開始を申し立て、裁判所が『破産管財人』を選任し、その破産管財人が主体となって裁判所の管理のもとで行う、経営組織の財産権の総体に対する法律上最も強力な清算・分配手続」です。
 この破産手続では、本人や関係者から破産の申立てがなされて裁判所が「破産手続開始(以前は破産宣告とよばれていた)」の決定がなされたときには、「破産管財人」の選任もなされ、抵当権などの特別の担保権を除いて個別資産に対する民事強制執行手続などができなくなり、その状態の中で破産管財人が裁判所の監督のもとで、経営組織の財産関係を調査し、その時現在の経営組織の資産の範囲で、法律上の順序に従って各債権者に対して公正にその資産の配当をおこない、経営組織の財産を完全に分配することになります。
 個人の破産手続の場合には、生活にどうしても必要な一定範囲の資産はその個人に留保されます。

 この破産手続の終了時に最終的に残った債務一切に対しては、破産手続終了以後、民事強制執行など法的手続を取ることはできなくなるほか、破産終了にいたるまでに−その手続に関連しての不法な行為がなされたり、破産の事情として著しい浪費行為などのなかったかぎり、破産手続終了時に残る債務一切を法律上消滅させてもらうこと(「免責」とよばれる)が可能になります。

 以上のような、倒産対応の公正さを基準にした「適法」な法的手続をとった場合には、倒産にいたるまで及び倒産手続中の経営の仕事に−不法な手続を選んだりしないで−力を尽くしていたのであれば、破産手続を取らない場合(再生手続を取ったような場合)であれば、同じ仕事(事業)の経営基盤にもとづく経営の再建や、別の経営基盤と仕事をつくっていくことによる再起の可能性が残り、また破産手続を取った場合でも、免責を受けて新たに別の経営基盤と仕事をつくっていくことによる再起の可能性が残ります。

 以上のような,倒産対応の公正さを基準にした「適法」な法的手続をとらなかった場合には、
 (負債の額が大きい場合には、プラスの資産や権利も、それだけ取り出せることができるのであればある程度まとまった数量で存在していることが多いために)経営組織の緊急事態に対する意志や行動力の弱み−基本的には、そういう状態では関係者に対して正当な権利利益でも主張していきにくいという弱み−を狙って、脅したり傷害を加えたりしながら不法な利益を得ようとする組織暴力団などのいわゆる「民事介入暴力」行為が介入してくることが少なくなく、このような介入を許した場合には、再建や再起が、経済的な面だけでなく法的な面でも無理(ないし不可能)になってしまう結果が生じえます。

 「清算」とは、
 「(経営業績目標の未達成連続その他の原因のために自分の意志にもとづかないで経営する仕事(事業)ができなくなってしまう)「倒産」とは関係なしに、自分の意志と行動で、その時点までの売掛・買掛その他の事業上の取引関係と事業上の財産とを、既存の売掛の回収・既存の買掛の支払・取引契約の解約・事業上の資産の売却処分などを通して縮小させていって、経営している仕事(事業)を完全に終了させ、かつ事業上の財産を完全に零にするまでの手続」のことです。

「解散」とは、
 「経営組織が会社などの法人や組合である場合に、その法人や組合が清算手続に入ることを決定する決議を、総会などその法人や組合の最高意思決定機関が行うこと (つまり、清算手続に入ること、をその組織が決定すること)」 です。

 清算が完了すると、その結果残った財産(資産)があれば、その法人に資本として出資していた人に払い戻されてその清算手続は終了しますが、財産がマイナスで残った場合(資産を超過して負債が残ってしまった場合)には、その債権者たちから全額債権放棄してもらえれば零になって終了しますが、放棄してもらえなければ、その仕事(事業)以外の仕事や個人家計財産などから返済していって、その返済が終了した時点で清算が終了することになります。

 普通の清算手続では、自分の意志と行動で経営する事業を終わらせることになり、それが終了すれば、「倒産」とはまったく関係なかったことになります。

 ただし「清算」の途中で、たとえば負債の延滞損害金の割合が年30%などの高率であるような場合には、縮小した事業利益と事業上の財産を処分して返済にあてても、負債の方が増えてしまって返済しきれなくなって、「倒産」してしまうということもありえます。

 
  
4. 「支払遅延の累積」の、経営上での意味とその結果

〔支払遅延の累積の、経営上での意味〕
 最低限度の「経営業績目標」の未達成が数か月ないし数年間連続すると、手持ち資金が減ってくることになるため、(家計からの繰入をしても)買掛金や、返済金元金利息や、諸費用の「支払遅延」が発生してくる可能性が生じることになります。

 その、それぞれに対する支払遅延は、多くの場合に月単位で計算され、それが数か月分(1月,3か月,6か月などがそれぞれ基準になっていることが多い)累積されると、「支払遅延の累積」ということになります。

〔支払遅延の累積の、経営上での結果〕
「支払遅延の累積」の結果は、まず、それが借入金の場合には遅延した借入金の(その時点では個々の分割返済)元金に対して、利息よりずっと高い利率の(金融機関の場合で年15%位の)、遅延損害金を付けて返済しなくてはならなくなることです。

 つぎに、借入金の契約内容や金融機関の事務処理基準によっても異なりますが、さらに遅延が(普通)3か月ないし6か月位累積すると、返済期限について分割繰延べ返済が可能であったものが、繰延べを認められなくなって一括返済を請求される状態になり、その一括請求を受けた時点からは、その借入金全額について遅延損害金を付けて返済しなければならなくなります。

 それぞれ、その借入金についての契約書の契約条項に基づくものです。1000万円のローン残債全額では、1年間150万円位を、元金返済の他に返済しなくてはならなくなります。

 なお,金融機関ではない金融業者からの借入金の場合には、たいてい利息そのものが年30%近くにまでなっています。契約として有効な利息の利率範囲は、「利息制限法」で15%ないし年20%が限度ですが、一定の条件を満たせば30%近くまで受け取ることが可能だと法律で認められているため、その限度までの契約になっていることが多くなっています。
 1000万円の借入に対して1年間で300万円近くの利息を付けて返済しなければならないわけです。この利息も返済できないでそれを込で借りかえると1300万円位が元金になり、それに対してさらに1年間400万円近くの利息を付けて返済しなくてはならないことになっていきます。

 ファイナンスリース契約の場合には、支払遅延累積の結果リース会社から繰延べ支払を認められなくなって一括返済を請求された場合には、リース会社に支払わなければならない支払遅延に対する損害金は、リース契約の中で一般に、「残リース料全額」位の金額になっています。

 借入金やリース料以外の、買掛金その他の仕入販売経費の場合には、遅延による高い利率による損害金は契約されていないことが多いのですが、商法で、支払期日から年6%の割合の利息を付けて支払をしなくてはならないことになっています。(内容によっては適用されませんが。)

 さらに支払遅延が累積していって、その支払先債権者に対してできる限りでも誠意のある対応のない場合、あるいは債権者が数多くいて債権者の債権の保全ができなくなるような場合、さらには、債権担保を提供していても損害金等が増えて返済額が増加しその担保での債権の保全ができなくなるような場合、債権者から、以下のような「法的手続」の実行がなされてきます。
 ただし、その「法的手続」の実行がなされる場合でも、また、どのような(すべての、といってもよいのですが)法的手続がなされる場合でも、債務者の最低限の生活費を超えるような所にまでは、及ばないものになっています。


〔支払遅延累積の、経営上での結果として、債権者が取りうる法的手続とは〕
ア).「不動産に対する担保権の実行手続」
 これは、不動産に対する抵当権・根抵当権などの実行手続のことで、いわゆる「不動産の競売」手続のことです。
「抵当権」は、個別的な特定の、たとえば特定の借入金などの債権を担保するための不動産担保権で、「根抵当権」は、一定範囲内の取引上の債権など、その根抵当権で担保される債権の範囲とその根抵当権で担保される金額の上限となる限度額を設定しておき、その範囲と限度額の債権を担保するための不動産担保権です。)
 それぞれ、抵当権または根抵当権の不動産登記をすることによって、その権利を実質的に確保できるようになります。

 * 根抵当権の、この上限となる限度額のことを、「極度額」といいます。根抵当権の(登記された)極度額は、利息損害金などを一切含めた上限の担保限度金額です。一方、抵当権の(登記された)債権金額は、利息損害金を含まない金額で、その担保権実行のときには、利息損害金を通算して2年間分が上乗せして担保されることになっています。

 この(根)抵当権の実行手続の手順は、借入金などの債権の支払遅延が累積した場合に、(根)抵当権を付けて登記してある不動産について、(根)抵当権者からその債権の一括返済を請求したうえで裁判所に申し立てて、裁判所でその不動産の評価をして最低競売価格を設定したうえでその競売を行い、通常は一定期間内の入札結果による最高額買受申込者に落札させてその買受代金を裁判所で預かって、その買受代金から競売にかかった費用を引いた残額を(根)抵当権者に対して、登記された順序で(根)抵当権の限度額で支払い、その残額についてはその競売手続で配当要求することのできた一定の債権者に、法律で決められた基準で配当するというものになります。

 買受価格から競売費用を引いた残額が(根)抵当権の利息・損害金を合わせた債権額に足りないときは、なお債権は残り、返済をしていかなくてはならないことになります。

イ).「私有する財産権に対する民事保全手続」
 債権者が、自己の債権の回収・返済を確保できなくなる恐れが高い場合に、裁判所にその一応の証拠を付けて申し立てて、一定の保証金を積んだうえで、債務者の私有する不動産や、預貯金や、売掛金や、賃金や歳費などの財産や権利に対して、裁判所から、それらの財産を他に処分することを法律上(他の第三者との関係上・つまり相対的に)禁止する決定を行ってもらい、下記のウ).の強制執行手続をとるまでの間、その財産に対する債権の実効性を確保しておく手続です。
 「仮差押」手続とも呼ばれます。

ウ).「私有する財産権に対する民事強制執行手続」
 債務者の、不動産や、預貯金や、売掛金や、賃金や歳費などの財産権に対して、その債権があることの確定判決をもらった債権者など一定の債権者が、裁判所に対して、債務者のそれらの財産権の差押え・競売手続を申し立て、裁判所がそれらの財産権の「差押え」をしたうえで、それらの財産権の競売(売却処分)や権利移転処分を行い、債権者への分配を行う手続です。
 不動産に対する強制執行手続は,抵当権実行手続と同様な進行になります。

5. 「手形小切手不渡り」及び「銀行取引停止」の意味とその結果

 手形や小切手は、資金の支払の約束の一種で、信用(支払いの繰延べさらには融資)を受けることなので、その不渡りは、支払遅延ということになります。

 手形小切手は、商取引上使用されるものとして一般の債権より信用が高いものとして流通される必要があるために、その不渡り・すなわち支払遅延にはペナルティ(制裁)が付けられていて、6か月内に2回の(信用に関する)不渡りをだすと「銀行取引停止」が行われ、金融機関の手形小切手の使用をすることが2年間できなくなります。
 つまり銀行手形による信用を受けられなくなります。

 この時点で、多くの取引を銀行手形を通して行っている(すなわち手形による信用受けを多く行っている)経営組織の場合には、そのような状況では他の債権の支払遅延の累積も重なっていることも多いこともあって、いままでどおりに仕事(事業)の経営を自分の意志や行動で継続していくことが困難になって、いわゆる「倒産」状態になることが多くなります。

 手形を使わなくてもやっていける仕事(事業)の場合では、銀行取引停止だけでは「倒産」状態にはなりません。

6. 「再建」と「再起」のそれぞれの意味

 「再建」とは、
 「倒産状態にあった経営組織が、その経営を、自分の意志と行動にもとづいて維持していくことができるようになること」です。
(このサイト内では、何よりこの意味で使用しています。)

 「再起」とは、
 破産した経営組織、あるいは負債がふくらんで返済完了が不可能であって事実上破産状態にあった経営組織が、「免責」を受けたり、「時効」によって負債が法的に消滅したりして、負債返済の社会的圧力が消失した条件の中で、新たに自己の仕事(事業)の経営を自分の意志と行動にもとづいて継続して維持していくことができるようになること」です。
(このサイト内では、何よりこの意味で使用しています。)
 但し、会社その他の「法人」は、破産手続が終了すると法律上消滅してしまうので、この「再起」は、個人だけが可能ということになります。
                          
7. 「経営危機」が発生する原因についての基本的な法則性

 この、経営危機が生じる原因について,なにか法則性が見いだせるかどうか、−しかもそれに働きかけることによってそれを食い止めることができる、あるいは減少させ、さらには逆転させることができるような共通な法則性を、見いだせるかどうかですが、
 (つまり、この原因の基本的な法則性を知るのは、それに働きかけてその発生を減少させるため、またその発生後のよりよい対策を立てるため、ですが、)
 基本的なところから考えていって、次のようなものを見いだすことができます。そしてこれが直接的な原因であると言っていいと思います。

@.まず、経営業績(=経営による利益収入=経営による付加価値の対価収入)は、年間や数か月間などの一定期間の、なにより自社(主力)商品の売上収入から、仕入販売費用支出を引いたものなので、
(原因A−イ)『自社(主力)商品の売上(販売)数量の過少の継続的蓄積』
(原因A−ロ)『自社(主力)商品の売上(販売)単価の過少の継続的蓄積』
(原因B)『自社(主力)商品の(貸倒れを含む)仕入販売費用の過大の継続的蓄積』
* 設備投資を手持資金(資本金)でなく、信用(借入金)で行った場合の借入金利息資金は、当然この仕入販売費用の一部ですが、借入金元金返済資金も、(簿記会計や税法上では仕入販売費用には入りませんが、またその設備の使用に見合う減価消却費が販売費用の一部になるにしても、)経営業績目標の未達成連続が生じる原因について考える場合は仕入販売費用の一部、ないし一種だと把握しておいたほうがよいと考えられます。

A.次に,(原因C)『売上が資金収入になる時期が、仕入販売費用の資金支出時期に比べて、遅れる部分のその金額が多いことの継続的蓄積(言い換えると、仕入販売費用支出時期が、売上収入時期に比べてあまりに早い部分の、その金額の多いことの継続的蓄積)』
* これは、実際上は、その時期の間の仕入販売費用と売上との差額の資金を、信用 (借入金) で行う場合に、上記(B)と同じように、利息だけでなく、借入金返済元金対策も必要になることがあるのに、それが見えなくなってしまう、 という形で直接的原因になることが多いものです。
 (その差額の不足資金を、借入金でまかなうことをしなければ、まず、その経営組織に属する人たちの生活が困難になっていくため、目に見えるかたちで早めに他の対策を立てて実行する必要に迫られるのですが、借入金でまかなうと、目に見えにくく (見えなくなって)、対策を立てて実行することが遅れてしまうのです。

B.最後に(原因D)『設定している経営業績目標自体の過大』
*(達成するのがほとんど無理ないし不可能な目標を予測して設定しているという場合は論外として、)これは実際上は、経営組織(勤労者の場合には勤労者自身)の経営業績である利益収入(勤労者の場合には賃金賞与)で家計支出をまかなっている大多数の人々が、家計で必要な支出をまかなえるだけの経営業績目標を達成できない状態が連続する場合に、上記の(AB)及び(C)の原因に対する働きかけだけではその未達成の状態を減少ないし逆転させられない、そのもう一つの原因として見いだされることになると考えられます。
 実践的には、(家計外での)経営業績目標を家計支出との関係で下げることができる場合に(つまり家計の支出を本当に必要な限度にまで削ることができる場合に)、これ(D)が原因の一つになりうるということです。もちろん業績目標をいくらでも下げていいというのであれば「未達成」など生じえませんが、実際には「最低限度家計で必要な支出をまかなえるだけの」という経営の目的からの限度があるので、その点から見て過大かどうかも原因になりうると考えられます。

C.「倒産」や「再起不可能」などの状態は、経営業績目標の未達成連続という  (以上の、(A)から(D)の) 原因の他に、次のような原因で発生します。(前にも述べてありましたが、再度ここでも述べます。)
(但し、それが一回あるいは数回で「倒産」や「再起不可能」を発生させてしまうほどの数量ではない場合には、それらが積み重なることによって、やはり「経営業績目標の未達成連続」という原因になっていく、ということになります。)

(原因a).「自己の経営能力を含む、仕事の能力喪失を発生させるような事故や、病気や、身体的ないし精神的障害の発生」があったこと

(原因b).「白地手形の振出や裏書」 「多額の保証債務の負担」 「多額の損害金約定のある契約書への調印」 「多額の不法行為責任や製造物責任を発生させるような行為や製品管理」などの、「それが一回、あるいは数回発生するだけで経営主体の経営を継続していくために必要な経営資源のまとまりを崩してしまうような、法律的に重大な失敗」をしたこと

(原因c).取引関係者の信頼を失ってその結果、経営主体の経営を継続していくために必要な経営資源のまとまりを崩してしまうような、「犯罪行為その他の、公正さを大きく欠く不法な、あるいは違法な行為を行った」こと

などです。
      
 
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